はじめに
タイトルにある、日本の「社会的状況」とは一体何でしょうか?なぜそれが日本語教育と関係あるのでしょうか?
これから、みなさんは「生活者としての外国人」への日本語教育について必要なことを学んでいきますが、その前に、現在この「生活者としての外国人」への日本語教育」を取り巻く、日本の社会的状況というものをみなさんと一緒に確認しておく必要があると思います。
この点を知っておくと、日本の国や自治体が多文化共生や日本語教育、そして、地域の日本語教室をどのように位置付けているのかが分かるからです。このことは、みなさんが今後現場で活動していく上においても重要なことだと思います。
このような観点から、この講座では、生活者としての外国人に対する日本語教育に関わる日本の社会的状況を以下の3つ (問題・必要な対策・国の施策) の側面から見ていきます。
- 問題:少子高齢化と生産年齢人口の減少
- 対策:外国人材の受け入れと定着
- 施策:新規の在留資格・日本語教育の推進法・共生のための総合対応策
では、まずは、現在の日本の社会の「問題」と「対策」について見ていきましょう。
日本社会の抱える問題と必要な対策
よく言われているように、日本は少子高齢化が進んでいます。このことによる生産年齢人口の減少と、それに伴って生じる問題について見た上で、必要な対策のひとつとしての外国人材の受け入れと定着の重要性について考えたいと思います。
問題:生産労働人口の減少
では、日本の抱える少子高齢化やそれに伴う生産年齢人口の減少という問題について見ていきましょう。
少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少という問題と、そのことが将来の日本社会に与える影響について見ていきましょう。
人口ピラミッドの変化
以下のグラフ (表を拡大表示) は、日本の年齢別の人口を表したものです。縦軸が年齢を表しています。下のほう (黄色) が若い年代で、上の方 (赤色) が年をとった人です。横軸はその年齢の人口で、色のついた部分の幅が広ければ広いほど、その年齢の人口が多いことになります。ベージュ色の部分は「生産年齢人口」と呼ばれる20歳〜64歳までを表しています。
日本の人口ピラミッドの変化
国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」
一番左 (1990年) を見ると、肌色の部分の真ん中辺りと黄色の部分の上の方が幅が広くなっており、この年代の人口が多いことがわかります。これは、1990年における団塊の世代と、団塊ジュニア世代の人口を表しています。表の上のアニメーションは、この両世代がどんどん年をとっていくことで、年をとった人の人口は増えていき、一方で、年をとったこれらの世代をささえる働き手の世代は減っていっていくことを示しています。
このままだと、日本は高齢者の人口が増え、それを支える若者世代の人口は減り、国全体の人口も少なくなっていくということが分かります。
若者にかかる負担
上で見たような状況は、社会保障の観点から見ると、非常に大きな問題です。同じ研究所が出しているデータでは、ひとりの高齢者を支える若者が、1965年には、約9人いた (胴上げ型) のに対し、2012年には2.4人になり (騎馬戦型) 、2050年には約1人しかいない (肩車型) ということになります。つまり、高齢者の社会保障費として、2050年の若者には1965年の若者の約8倍の負担がかかってくることになります。
肩車型社会
これがどういうことかと言うと、2050年の若者は、お年寄りのために給料から差し引かれる額が1965年の若者に比べて8倍近くにのぼるということです。これは恐ろしいことですね。
予想される問題
このような状態になると、どうなってしまうのかという点について、経団連が2008年に発した警告と提言をまとめたものが以下の図です。高齢者が増えて若年層が減ると、経済成長や財政・年金制度、そして経済社会システムに影響が及び、若者は高齢者を支える負担などを忌避して海外に移住してしまうという懸念です。
日本経団連タイムス No.2925 (2008年10月16日)
提言「人口減少に対応した経済社会のあり方」 (日本経済団体連合会, 2008)
具体的には、「経済成長は押し下げられ、財政・年金制度は持続困難となるばかりでなく、医療や介護といった人手を要する経済社会システムを維持していくことも難しくなる。」(日本経団連タイムス No.2925)、「重税や過度な社会保障負担、あるいは経済社会システムの弱体化によって、現役世代、とりわけ若者世代から将来に対する夢と希望が失われれば、今後、ますますグローバ ル化が進む中にあっては、高度人材を先頭に、人口が海外へ流出し、国全体と して人口減少が加速度的に進むことになりかねない。」(「人口減少に対応した経済社会のあり方」) といった警告がされています。
対策:労働力の確保
上で見たような問題の解決策として、どのようなものが挙げられるでしょうか。
このような問題に対する方策として、経団連は上の図の一番下にあるような「成長力の強化」「未来世代の育成」「人材の活用・確保」という3つの提言をしていますが、このうち、今回の講座において重要なのが最後の「人材の活用・確保」の部分です。
人材の活用・確保の方法
経団連は「人材の活用・確保」の方法として以下のような方策を提言しています。1つ目は既存の国内の潜在的な人材を活用すること、2つ目は新規に海外から人材を受け入れること、そして、3つ目はその海外から人材に定着してもらうことです。
「人材の活用・確保」の方法
- 女性の社会進出等の促進
- 国際的な人材獲得競争と日本型 外国人材受入れ 政策の検討
- 受け入れた 外国人材の定着 の促進
生活者としての外国人の日本語教育に関わるのは、このうちの2つ目と3つ目、すなわち、海外からの人材の活用に関わる部分です。これらの点については、次のセクション以降で見ていきましょう。
- このセクションのまとめ
このセクションでは、日本社会の抱える喫緊の課題として、高齢化と生産労働人口の減少、これによりもたらされる人口の流出などについて見ました。また、それを解決するための方策のである「人材の活用・確保」の手段として、外国人人材の受け入れとその定着が重要であるという点を見ました。
次のセクションでは、これらの点に関する国の施策等について見ていきますが、その前に、みなさんにもこの問題について考えていただきたいと思います。
- 考えてみよう!
みなさんは、外国からの人材の受け入れと定着がうまくいくために、どのような課題を解決していかなければならないと思いますか?
施策① 外国人材の受け入れ
前のセクションで見たように、日本の将来を考える上で、外国人材の受け入れと定着は非常に重要な課題です。上で見た経団連の提言の中で、外国人材の受け入れに関しては次のような提案がされています。
外国人材の受け入れに関する提言
- 1. 高度人材の積極的受け入れ
- 2. 将来の高度人材となる留学生の受け入れ拡大と就職支援
- 3. 一定の資格・技能を有する人材の受け入れ
提言「人口減少に対応した経済社会のあり方」 (日本経済団体連合会, 2008)
高度人材 (1) や、将来高度人材となることが期待される留学生 (2) 、あるいは、高度人材とまではいかなくても、一定の技術を有した人材 (3) を受け入れていくことが必要だということですね。
このセクションでは、従来の外国人の在留資格や資格別の就労者数等といった現状について確認した上で、新たな資格である特別技能1号と2号について見ます。そして、これらを踏まえて、今後の外国人就労者の在留資格の区分がどうなるのかを見たいと思います。
国としての方針と在留資格の区分
外国人材受け入れに関する国としての方針
日本の外国人材の受け入れの方針は、受け入れる外国人を専門性・技術レベルによって、以下のように大きく2種類に分けて考えています。
| 分野 | 受け入れ方針 | 説明 |
|---|---|---|
| 専門的・技術的分野の外国人 | 積極的に受け入れ | 経済社会の活性化・国際化を図るため |
| 上記以外の分野の外国人 | 様々な検討を要する | 経済社会と国民生活への多大な影響を考慮するため |
この表にある通り、ひとつは「専門的・技術的分野」での就労で、このための人材は積極的に受け入れていくという方針です。もうひとつはそれ以外の分野での就労で、こちらの人材については、国民のコンセンサス等に配慮しながら慎重に進めていく方針です。
在留資格の区分
では、現在の日本の在留資格を、職業の選択という観点から確認してみましょう。現在日本国内に在住する外国人の在留資格の区分は以下のようになっています。「一覧を表示」をクリックすると、個別の資格と例が一覧で表示されます。
A は定められた範囲で就労が認められる資格です。技能実習生もこの中に含まれます。B の「身分・地位に基づく在留資格」は日系人などの定住者や在日韓国人・朝鮮人などの特別定住者、日本人と結婚した人などです。この人たちは職業に関する制限はありません。C の「特定活動」は EPA (経済連携協定) に基づいて来日した看護師や介護福祉士の候補者やワーキングホリデーで来ている人で、職業の制限は個々の許可の内容に依ります。D は留学生や観光客などで、就労は認められていません。ただ、本来の在留目的を阻害しない範囲で、週28時間以内で相当と認められる場合には就労が認められています。
資格別の在留者数
では、日本で就労する外国人の数 (総数165.9万人) を上で見た在留資格ごとに見てみましょう。(ここでは、「就労目的の在留」は「専門・技術分野」のみの数で、「技能実習」は分けてカウントしています。また、「外交」、「公用」及び「特別永住者」は集計対象外となっています。)
在留資格別の就労者数
一番多いのは、身分・地位に基づき在留している外国人 (上記B) で、制限なく働ける人たちです。それに続いて技能実習生、それから、資格外活動で働く留学生等 (上記D) 、そして、就労目的の在留者 (上記A) 、特定活動 (上記C) と続きます。
表で示すと、以下のようになります。
| 在留資格 | 人数 | 割合 |
|---|---|---|
| ① 就労目的の在留者 | 32.9万人 | 19.8% |
| ② 身分に基づく在留者 | 53.2万人 | 32.1% |
| ③ 技能実習 | 38.4万人 | 23.1% |
| ④ 特定技能 | 4.1万人 | 2.5% |
| ⑤ 資格外活動 | 37.3万人 | 22.5% |
※ 外国人雇用状況の届出状況(令和元年10月末現在)による
ここまで、従来の在留資格の枠組みと、現在の就労者の人数をそれらの資格別で見てきました。次からは、2019年度から始まった新しい在留資格について見ていきたいと思います。
新しい在留資格
では、2019年度から設けられた新しい在留資格である「特定技能」という資格について見ていきましょう。
特定技能1号と2号
「特定技能」は技能実習よりももう少し技能レベルの高い人たちに対して付与される新しい在留資格で、特定技能1号と2号に分かれます。1号と2号の違いとしては、技能のレベルの違い、及び、対象となる産業分野が異なります。2号は1号よりも技能レベルが高く、分野は「建設」と「造船・舶用工業」の2分野に限られています。
また、在留資格としては、以下のような違いがあります。
在留資格のポイント
1号と2号とでは、以下の表の通り、在留期間の上限や家族を呼べるかどうかなどの条件に違いがあります。
| 特定1号 | 特定2号 | |
|---|---|---|
| 在留資格の更新 | 1年,6か月又は4か月ごと | 3年,1年又は6か月ごと |
| 在留期間の上限 | 上限5年まで | 上限なし |
| 技能水準 | 試験等で確認 * | 試験等で確認 |
| 日本語能力水準 | 試験等で確認 * | 試験等での確認は不要 |
| 家族の帯同 | 基本的に認めない | 要件を満たせば可能 |
| 受入れ機関又は登録支援機関 による支援 | 支援の対象 | 支援の対象外 |
*技能実習2号を修了した外国人は免除
より専門的・技術レベルの高い「特定2号」のほうが、在留期間の上限がなく、家族を呼ぶこともできるなど、優遇されていることが分かります。特定技能1号の特徴として、技能実習2号からのビザの書き換えが可能だという点があります。仮に技能実習の3年間を完了した後に特定技能の1号に変更すると、計8年日本で就労できることになります。また、この場合は特定技能1号に必要な技能水準や日本語能力水準の試験は免除されます。
特定技能の1号と2号の位置付け
では、これまであった在留資格と並べて、新しい資格である特定技能1号と2号の位置付けを確認しましょう。これまで、専門的・技術的分野の在留資格として、上で見た①がありました。また、非専門的な分野の在留資格として、技能実習がありました。特定技能2号は「専門的・技術的分野」の就労者と並ぶ高度な技能をもつ就労者という位置付けで、特定技能1号は技能実習と高度なレベルとの中間的な位置付けになります。
特定技能1号は専門的な分野とそうでない分野の間、2号は専門的な分野と同等という位置付けです。
- このセクションのまとめ
このセクションでは、現在の日本の外国人の就労者の分類や内訳、そして、外国人材の受け入れの拡充のための施策として、新たに設けられた在留資格である特定技能1号と2号について見てきました。次では、既存の、あるいは新たに受け入れた外国人の就労者に日本に定着してもらうための施策について見ていきたいと思います。
特定技能や技能実習を含む、就労に関する在留資格について理解できたでしょうか?もし、疑問に感じている点や問題を感じている点などがありましたら、それについて一緒に考えましょう。
- 考えてみよう!
技能実習を含む既存の在留資格や、新しい在留資格である特定技能に関して感じた疑問点や問題点などがあったら、書き出してみてください。みんなで一緒にそれらの疑問や問題について考えてみましょう。
施策② 外国人材の定着
では、日本が、外国人材が定着したいと思えるようなところになるためにどんな施策が行われているかを見ていきましょう。
先に見た経団連の提言の3つ目である、外国人材の定着について見ていきましょう。この点については、提言の中で以下のようなことが言われています。
外国人材の定着に関する提言
- 1. 地域・政府・企業の連携による社会統合政策の促進
- 2. 日本語教育強化、社会保障制度の改善適用、就労環境整備、法的地位の安定化、各種行政サービスの向上
- 3. 国民的なコンセンサス形成 (に向けた議論)
提言「人口減少に対応した経済社会のあり方」 (日本経済団体連合会, 2008)
上記 1 の社会統合については後でもまた述べますが、異なる文化や母語をもつ人々が相互に適応し、ひとつの集団を形成するということです。社会が言語や文化ごとに分散してしまっている状態は望ましくないということですね。また、2 にあるように、日本語を学ぶ機会を確保したり、職場で不当な扱いを受けないようにしたり、あるいは、外国人であることによって生活が不便を強いられることのないようにすることも非常に重要です。3 は、日本に既に住んでいる日本国民の理解を得ることも重要だということですね。
これらの点に関して、国もさまざまな施策をもって対応・推進していこうとしています。ここでは、2019年に施行された「日本語教育の推進に関する法律」と2020年に改訂・発表された「外国人の受入れ・共生のための総合的対応策」の内容を概観しながら、この点について見ていきましょう。
日本語教育の推進に関する法律
まずは、2019年6月に施行された「日本語教育の推進に関する法律」について見てみましょう。
目的
この法律には、日本語教育の推進の目的として以下のように書かれています。
日本語教育の推進に関する施策を総合的かつ効果的に推進し、もって多様な文化を尊重した活力ある共生社会の実現に資するとともに、諸外国との交流の促進並びに友好関係の維持及び発展に寄与することを目的とする。
日本語教育の推進に関する法律 (p.2)
大きく分けて、「共生社会の実現」と「諸外国との友好」という2つの目的があることがわかります。ひとつめの目的は、今回のテーマにより深く関わるものですね。では、実際の施策の内容について見てみましょう。
施策の内容
以下がこの法律の施策の概要になります (項目をクリックすると、内容が箇条書きで表示されます) 。
例えば、ひとつめ (A) の「国内における日本語教育の機会の拡充」を開くと、日本語教育の対象としてどのような人々を想定しているのか分かります。また、みっつめ (C) の「日本語教育の水準の維持向上」を見ると、教師の資質の向上などが含まれていることが分かります。また、いつつめ (E) の「地方公共団体の施策」を見ると、地方ごとでの施策にも積極的に関わっていこうとしていることが分かります。
このように、国としても日本語教育の向上によって、多文化共生・社会統合を目指していこうとしていることがよく分かります。以下のリンクから外務省のまとめた法律の概要が見られます。上で見たのよりも少し詳しく書かれていますので、参照してください。
参考リンク
外国人の受入れ・共生のための総合的対応策
2020年7月には「外国人の受入れ・共生のための総合的対応策」の改訂版が発表されました。この対応策は、「日本語教育の推進に関する法律」よりも先駆けて関係閣僚会議で練られてきたもので、今回で2回目の改訂となります。
目的
この「総合的対応策」は以下のような目標に基づいています。
総合的対応策は (中略) 日本人と外国人が安心して安全に暮らせる社会の実現に寄与するという目的を達成するため、 外国人材の受入れ・共生に関して、目指すべき方向性を示すものである。
外国人の受入れ・共生のための総合的対応策・本文 (法務省, 2020, p1)
では、個々の対応策について見てみましょう。
対応策の内容
具体的には、以下のような対応策から成ります (項目をクリックすると展開されます) 。
例えば、2番目の「外国人材の円滑かつ適正な受入れの促進に向けた取組」の中に (3)「悪質な仲介事業者の排除」とあります。技能実習などの中に、現地で多額の借金を負わされてから来日する就労者がいることを聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。このような問題に対して取り組むことも明記されています。
また、3番目の「生活者としての外国人に対する支援」の中には (7)「社会保険への加入促進等」とあります。これは、例えば、外国人の就労者から「自分は病気にならないから、給料から社会保険料を引かないでほしい」というような要望があるケースもあるのですが、それはダメですよ、ということを徹底しましょう、というようなものです。
このように、非常に多岐にわたる共生のための対応策が盛り込まれています。就労そのものに関する対応策以外にも「共生」に向けての様々な取り組みも対象となっていますので、詳しくは以下の参考リンクを見てみてください。
参考リンク
地域における多文化共生推進プランの改訂
上で示した総合的対応策よりもさらに前の 2018年には、総務省が地方公共団体向けに「多文化共生の推進に係る指針・計画」を発表していました。 (この推進プランに関しては、別の講座で取り上げていますので、ここには改訂のポイントをまとめた資料へのリンクだけを記載しておきます。)
参考リンク
- このセクションのまとめ
ここまで、外国人材の定着に関する国の施策について見てきました。国としても、これらの問題に対して多岐にわたる取り組みを行っている (行っていく) ことが分かったと思います。
このセクションで見た多岐にわたる対策のうち、みなさんが特に重要だと感じたものはありますか?それはなぜですか?一番最初にした質問と似た質問ですが、今回はもう少し具体的に考えてみましょう。
- 考えてみよう!
外国人材の受け入れや、そのための多文化共生・社会統合に関する国の施策のうち、特に重要だと感じたものは何ですか?また、それはどうしてですか?
おわりに:多文化共生社会と社会統合
では、ここまで見た日本の社会的状況や国の施策等を踏まえて、今後の日本社会の望ましいあり方について考えてみましょう。
ここまで見たように、日本社会の継続的な発展のためには、外国人を受け入れて定着してもらうことが非常に重要であり、そのためには、① 来日する外国人の文化を尊重すると共に、② 日本人と外国人の双方が相互に適応してひとつの社会を形作っていかなければなりません。即ち、「多文化共生」と「社会統合」が重要だということですね。
① 多文化共生社会
国籍や民族の異なる人々が、互いの違いを認め合い、対等な関係を築こうとしながら生きていける社会
② 社会統合
社会内の個々の集合体ないしは個人が、相互的に適応することにより、単一の集合体として統一されていく過程。この過程において、社会はより分散的な状態からより結合的、団結的な状態に転化していく。
前者は「個」を相互に重んじることで実現され、後者はそれらの「個」が全体としてひとつの「集合体」を成すことで実現されるものだと思います。つまり、「個」の尊重と「集合体」としての団結の両者を同時に達成することが重要だも言えるでしょう。そして、このために日本語教育が果たす役割が決して小さいものではないと考えられていることは、国として法律の整備に取り組んでいたり、対応策にも盛り込まれたりすることからも分かります。
多文化共生と日本語教育については、この後の講座でより詳しく具体的に見ていきますので、これらについては、またそれらの講座の中で一緒に考えていきましょう。

