このセクションでは、東日本大震災のケースを例に、多文化共生への取り組みを具体的に考えて行きます。東日本大震災では、外国人生活者や支援団体、日本語教室の支援者が非常に難しい状況に置かれました。このときの状況を知り、それを分析する、というアクティビティをみなさんに体験していただこうと思います。
<はじめに>
このワークショップの意図と流れ
今回の「ケース」について
このアクティビティで取り上げるケースは、「震災」という、ある意味で非日常的なものですが、これについて考えることは、私たちの「日常」の部分と非常に関わりのあることです。今回のようなケースを取り上げる意義について簡単に見てみましょう。
フミさん、こんにちは。上に書いたように、このアクティビティでは、「東日本大震災の際の状況」をテーマに、フミさんが実際の現場での支援活動に関わったときに役立つような活動をしてもらいます。
東日本大震災ですか?どうして普通のときじゃなくて、大震災のときの活動について考えるんだろう?一生に一回も遭わないかもしれないし…

確かに、そのように思うのもわかります。でも、このようにある種特殊とも言えるようなケースを取り扱うことで、普段は隠れてしまいがちなさまざまな課題を見つけることができるんです。ここでは、そういった潜在的な課題を気づけるようになってもらうことを目的としているんです。
なるほど。わかりました!確かに、普段は見落とされがちなことが表面化するのって、普通ではない事態のときだもんね。
アクティビティの流れ
では、震災というテーマから安全で安心した多文化社会構築への取り組みをデザインする方法を学ぶ流れについて見てみましょう。
アプローチ方法の講座でも見た通り、「状況をより望ましい状態」にするというスタンスで進めて行きます。ここでは、東日本大震災時の外国人生活者の状況といった実際のケースをもとに、状況を分析して課題の掘り出し、取り組みをデザインしていきます。そして、最後にはみなさん自身に、地域の特性に合ったテーマを取り上げ、課題解決のための取り組みをデザインしてもらいます。
A. 事例を見る

まずは、今回見ていく事例の「東日本大震災」の際の外国人生活者と支援側の人々の置かれた状態を振り返ります。ここでは、福島県の外国人生活者の日本語力に関するデータや、福島県における主な支援団体である県の国際交流協会の支援体制などについても見ます。
B. 事例を分析する・課題を認識する

次に、震災の際の状況を今後の改善へ向けて分析的に振り返り、「こうであればもっとよかった」という望ましい状況を考えます。その上で、当時の状況とのギャップから、取り組むべき課題を掘り出します。
C. 課題解決のための取り組みを考える

前節で見つけた課題をより具体的な形にして、どのような取り組みでもって解決に導いていくかを考えます。解決へ向けた取り組みは、目的と手段に分け、なるべく具体的な解決方法を考えます。
D. 地域に合ったテーマで取り組む

最後に、地域ごとの特性を考慮に入れた事例を考えてみなさんにテーマを選んでもらい、具体的な取り組みについて考えます。先に見た福島県での実際の取り組みについても紹介し、参考にしながら進められるようにします。
「より好ましい状態」をデザインするための手順ですね。わかりました!じゃあ、まずは今回のケースについて知ることからですね。